コラム

 公開日: 2013-11-17 

休業手当は賃金の 60 %?

 こんにちは。

 お客様から、次のような質問が寄せられています。

【質問】
 当社は、訪問介護事業を営んでいます。
 利用者の都合による突然のキャンセルなどで、その日に予定していた仕事がなくなり、従業員(訪問介護員)をやむを得ず休業させなければならなくなったときは、労働基準法第 26 条の規定を守り、休業手当として賃金の 60 %をきちんと支払っています。

 しかし、先日、当社の従業員 A から、「休業手当は賃金の 60 %では不十分であり、本当は 100 %支払われなければいけないはずだ。弁護士からそう聞いた。」と言われました。

 休業手当は、賃金の 100 %支払わなければいけないのですか?

【回答】
 よく分からない人もいると思うので、基本的なことから話します。

 職場において、従業員側の都合で仕事がされなかったとき、例えば、従業員が欠勤した・・・などの場合は、ノーワーク・ノーペイの原則と言って、働かなかった時間の賃金を会社が支払う必要はありません。
 しかし、会社側の都合で仕事がされなかったとき、例えば、業績の悪化で従業員に自宅待機を命じた・・・などの場合は、原則として、働かなかった時間の賃金を会社は「休業手当」として支払わなければなりません。

 そこで、問題となるのが、休業手当は、いくら支払えばよいのか?ということです。

 実は、休業手当の支払いについては、以下のとおり 2 つの法律で 2 重に基準が定められています。

( 1 )労働基準法第 26 条
 「使用者(会社)の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者(会社)は、休業期間中当該労働者(従業員)に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」

 つまり、賃金の 60 %以上を支払ってください!という意味です。

( 2 )民法 526 条第 2 項
 「債権者(会社)の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者(従業員)は、反対給付を受ける権利を失わない。」

 何だか難しい言い回しですが、要するに、従業員は、反対給付(労働の対価としての賃金)を受ける権利を失わない。つまり、賃金を全額( 100 %)支払ってください!という意味です。

 では、実際どちらの基準を適用すればよいのでしょうか?

 それは契約内容によるというか、ケースバイケースと言えます。
 労働基準法とは、そもそも労働に関する最低基準を定めた法律であることを考えれば、
 「本当は 100 %なんだけれど、そうもいかない場合は、従業員の生活保障的な意味合いとして最低でも 60 %は支払ってください!」ということになるでしょう。

 従って、会社側が「休業手当は賃金の 60 %」だと主張するならば、少なくとも就業規則等において、「休業手当として賃金の 60 %を支払う」と記載されていることが必要になるでしょうし、就業規則に休業手当についての規定が特に無いならば(または規定があったとしても)、ご質問の従業員 A さんのように、従業員から民法の規定に基づき賃金の 100 %を請求されることも考えられます。

 実際問題としては、仮に、従業員が休業手当として賃金の 100 %の支払いを求めるには、それが民法に定められている以上、会社を相手に民事訴訟の手続きをとる必要があります。

 訴訟にかかる労力や費用を考えると、通常、従業員にとってほとんどメリットがない( 100 %の支払いを勝ち取ったとしても訴訟費用を差し引くと、ほとんどの場合、金銭的に得るものは少額になってしまう、又は費用の方が多くなってしまう。)ので、そこまでする従業員は少ないでしょうから、結局のところ、労働基準法第 26 条の定めにより「賃金の 60 %」に落ち着くことになります。

 ただし、万一、訴訟を起こされた場合、会社は賃金の 100 %の支払いを命じられる可能性があることは知っておいた方がよいと思います。


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